愛猫家の皆さん、もし愛猫が突然、嘔吐したら?
びっくりしますよね?
そんなとき皆さんはどうされていますか?
とりあえず嘔吐物を確認してみる。
という飼い主さんがほとんどだと思いますが、その後、病院へ連れて行くべきか悩んでしまうことありませんか?
ここでは、愛猫が突然嘔吐した際の飼い主さんの対応についてご紹介いたします。
猫の嘔吐は日常茶飯事?
実は、猫の嘔吐は日常茶飯事なんです。
猫は、健康に問題がなくても嘔吐することがあります。
その理由についてお話ししましょう。
猫の舌をじっくりとご覧になったことはありますか?
実は猫の舌には細かいトゲのようなものが生えています。
毛づくろいをしている間、そのトゲに被毛が絡まり飲み込んでしまうのです。
体内に入った被毛は、便と一緒に排出されることもありますが、胃に残ってしまうこともあります。
胃に残った被毛が溜まって毛玉になると猫は、不快感を感じ吐き出そうとするのです。
食道筋層の構造上においても、犬はほぼ全域を意図的に動かすことができる横紋筋でできているのに対し、猫は上部の2/3は横紋筋ですが、下部の1/3は意図的に動かすことのできない平滑筋でできているのです。
そのため、消化に時間がかかり食道に溜まりやすいため、フードの吐きもどしをしやすいと言われているのです。
猫の嘔吐の原因とは?
猫は、嘔吐しやすいということがお分かりいただけたと思います。
それでは、猫はどのようなときに嘔吐するのでしょうか?
ここからは、嘔吐の原因について見ていきましょう。
猫の嘔吐には次の11の原因があると考えられます。
- 胃にたまった毛玉を不快に感じて
- 異物を食べた、早食いした、急な食事内容の変更などといった食事の問題
- 中毒性物質や毒物の摂取
- 糖尿病や副腎皮質機能低下症、腎不全・肝不全、甲状腺機能亢進症などの代謝性疾患
- 胃炎・胃潰瘍・胃捻転、異物や胃の幽門部などの胃のトラブル
- 寄生虫や腸炎、腸捻転、異物、腸閉塞など小腸のトラブル
- 腹膜炎・腫瘍・膵炎・臓器の腫大など腹腔内のトラブル
- 食道狭窄・拡張、腫瘍、食道炎、異物など食道のトラブル
- ウイルス性の伝染病
- ストレス
- 胃の運動の能力の低下による十二指腸から胆汁などの消化液の逆流による胃のむかつき
猫の嘔吐と吐出
分かりやすいようにここまでは嘔吐という表現をしてまいりましたが、実は猫の「吐く」という動作には2種類あります。
嘔吐(おうと)と吐出(としゅつ)です。
この二つの違いについてご説明いたします。
嘔吐
嘔吐は、脳にある嘔吐中枢がなんらかの原因で刺激され、脳から神経系統を通じて「吐く」信号を発信し、胃や十二指腸の内容物が口から吐き出されることをいいます。
吐き気を催すと、ゲーゲーと吐きそうな動作をして、下向きに吐き出します。
吐き出されたモノは消化が始まっている状態です。
吐出
吐出は、神経系や筋肉などの異常、または食道に腫瘍や異物があるなどのトラブルが原因で、食べたものが胃に到達する前に食道から逆流し吐き出されることをいいます。
吐き出されたモノは消化されていない状態なので、猫は吐き出したものをもう一度食べ直すこともあります。
頻繁に未消化の食べものを吐き出すようなら吐出の可能性が高いと言えます。
吐出は前に飛ばすような吐き方が特徴です。
食道拡張、重症筋無力症、若齢の心臓の血管の奇形など、なんらかの理由で食道の運動機能が著しく低下したときに吐出することがあります。
猫が吐いたときの対処法とは?

食べたものや飲んだものが胃に入る前に排出されるのが「吐出」、食べたものや飲んだものが胃に一旦入ってから排出されるのを「嘔吐」であることがお分かりいただけたことでしょう。
猫が吐く前ぶれを見せたら、飼い主さんは吐く前の様子と吐き方、吐いた後の様子をしっかりと観察しておきましょう。
猫の吐く前ぶれ、受診の目安、受診時に伝えたいチェック項目を用意しましたので、ご活用いただければ幸いです。
猫の吐く前ぶれのチェックリスト
- 頭を下げている
- よだれが出ている
- 元気がない
- 具合が悪そうにして小刻みに震えている
- 隠れて出てこない
- 横隔膜が収縮している
- 口を開いて舌を突き出し何かを吐き出そうとしている
- 咳をしている
急いで動物病院を受診したほうが良い場合とは?
- 激しく吐いている
- 一度に何回も吐いている
- 吐いた後も元気と食欲がない状態が続いている
- 吐く動作を頻繁にしていて元気がない
- 吐いたものに血が多く混じっている
- 吐いて下痢もしている
- 脱水して皮膚に張りがなく目がくぼんでいる
- 毎日1回でも数日以上嘔吐が続いている
- 頻繁に吐いていて徐々にやせてきた
- 吐しゃ物の中に虫がいた
- 誤飲・誤食、中毒の可能性がある
上記に1つでも☑️がついたようであれば、急いで受診されることをおすすめします。
猫の吐いたものから判断する受診の目安リスト
- 透明な液体を何度も繰り返し吐く場合(脱水症状を起こす可能性あり)→早めの受診を
- 黄色い泡(フードを与える間隔や頻度を変えるなど空腹にさせない工夫をしても落ち着かない)→受診をおすすめします
- 緑色・緑色の泡(膵臓の炎症や胆汁が多量分泌している)誤飲の可能性あり/腸閉塞の場合であれば短時間で命を落とす可能性あり→緊急性あり
- ゆっくり食べているのに消化途中で吐き出す場合→受診をおすすめします
- ひも、布などの異物等の誤飲/体内に残っていれば腸閉塞を起こす可能性も→緊急性あり
- 寄生虫→緊急性あり
- ピンク色の液体(口の中、胃や腸から出血/出血性いちょうえん、十二指腸炎の可能性あり)→鼻からも同じピンク色の血が出たら心臓性肺水腫の可能性あり→緊急性あり
- 赤い液体(胃腸や肺からの出血の可能性)→早めの受診を
- 赤黒い液体(消化器管内にできた腫瘍の破裂、呼吸困難を起こす心臓性肺水腫など重篤なケースが多い)胃がんの場合もあり→緊急性あり
獣医師に伝えたい!吐いているときの様子チェックリスト
猫が吐きそうなそぶりを見せたときから吐いた後までを注意深く観察し、以下のチェックリストにチェックをしておきましょう。
このチェックリストに沿って獣医師に症状を伝えると診察がスムーズです。
- 吐いたのは1回か?複数回か?またいつから始まったか?
- 最後に食べた食事からどのくらい時間が経っているか?
- どんな吐き方をしていたか?
- どんな吐しゃ物だったか?
- 吐いたあとのようすはどうか?
- 下痢や熱などの他の症状はあるか?
まとめ
猫が吐くということは、何らかのトラブルがあるのかもしれません。
猫が吐きそうなそぶりを見せたら、しっかりと観察しておきましょう。
「なんかおかしい」と感じたときには、上記のリストに当てはまらなくても、迷わず動物病院を受診しましょう。
その際には、吐いた実物を持参するか、難しければ写真や動画を撮影して獣医師に見せるとよいでしょう。
また持参するときは、テイッシュなどでくるむと吐しゃ物は吸われてしまうため、アルミホイルやラップなどを利用することをおすすめいたします。また吐いた直後は、水やフードを与えるのは控えるようにしましょう。
吐いた後少し様子を見ていて、回復しないようであれば早めの受診をおすすめします。
この記事の監修者
獣医師 宮尾 岳
西新宿ペットメディカルクリニック 院長
新宿区の西新宿ペットメディカルです。
動物が病気になったときに治療することだけが獣医療ではありません。
日々の予防を喚起するのも自分の務めです。
日常の些細な疑問やケアからでも病院へ相談、もしくは足を運んで頂ければ幸いです。