犬の椎間板ヘルニアってご存知でしょうか?
「椎間板ヘルニア」という病名を聞いたことがある方も多いと思いますが、犬の椎間板ヘルニアとはどのような病気なのでしょうか?
犬の椎間板ヘルニアは、決して珍しい病気ではありません。
どの犬にも起こり得る神経疾患です。
ここでは、そんな犬の椎間板ヘルニアの症状と予防法などについてご紹介いたします。
犬の椎間板ヘルニアとは?
犬の椎間板ヘルニアとは、椎間板が飛び出して脊髄を圧迫し、痛みや麻痺を引き起こす病気です。
神経がダメージを受けることで、痛みや足の麻痺などさまざまな症状が表れるのが特徴です。
犬の椎間板ヘルニアの症状とは?
椎間板が脊髄へ圧迫を起こす場所や程度によって症状は異なります。
犬の椎間板ヘルニアは、症状の重さによってグレードが5つに分かれています。
それでは、それぞれのグレードごとの症状について見ていきましょう。
グレード1/痛みだけ
グレード1は、脊髄の圧迫が軽度の場合です。
麻痺の症状がなく、痛みだけが見られます。
次のような症状が特徴です。
- 抱っこしたときに痛みでキャンと鳴く
- 段差の上り下りを嫌がる
- 背中を丸める
グレード2/軽度の麻痺
軽度の麻痺が見られるのがグレード2です。
足の力が弱くなり、足先の感覚が鈍くなっているものの、まだ自力で立ち上がり歩くことができる状態です。
グレード1の症状に加えて次のような症状が見られます。
- 歩く時にふらつく
- 足先がひっくり返る
- 胸部や腰のヘルニアの場合は後足のみ、首のヘルニアの場合は前足にも表れます
グレード3〜5/重度の麻痺
グレード3〜5になると、麻痺が進んできます。
脊髄の圧迫が重度になると、麻痺が強くなり立ち上がることができなくなります。
足だけでなく膀胱や肛門の機能にまで影響を及ぼすのが特徴です。
尿が出ない、便を漏らすなどの症状も見られるようになります。
犬の椎間板ヘルニアの種類について

犬の椎間板ヘルニアの種類には2種類あります
- ハンセン1型椎間板ヘルニア
- ハンセン2型椎間板ヘルニア
それぞれについて見ていきましょう。
ハンセン1型椎間板ヘルニア
椎間板が何らかの原因で破裂してしまうことにより、髄核(ずいかく)と呼ばれる椎間板の中身が脊柱管内に飛び出してしまう病気です。
症状は突然表れることが多く、ミニチュア・ダックスフンドがかかりやすいとされています。
ミニチュア・ダックスフンドは、軟骨異栄養性犬種と呼ばれる犬種で、椎間板の変性が比較的速く進行し、比較的若いうちから発症することが多いとされています。
軟骨が弾力性を失っているため、衝撃などでダメージを受けやすくなっているため、ハンセン1型の椎間板ヘルニアを起こしやすくなると考えられています。
トイ・プードル、フレンチ・ブルドッグ、ウェルシュ・コーギー、ビーグルなども軟骨異栄養性犬種であるため、椎間板ヘルニアへの注意が必要です。
ハンセン2型椎間板ヘルニア
椎間板が加齢により変性し、盛り上がって大きくなることにより脊柱管内にせり出してきて神経を圧迫する病気です。
加齢が原因なので、全ての犬種が対象です。
なかでも柴犬、ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバーなどで起こりやすいといわれています。
ハンセン2型は1型に比べて比較的緩やかな進行です。
犬の椎間板ヘルニアの原因とは?
犬の椎間板ヘルニアの原因についてご説明する前に、まずは犬の椎間板と脊髄についてご説明いたします。
犬の椎間板と脊髄の関係性とは?
犬の背骨は7個の首の骨(頸椎)と、13個の胸の背骨(胸椎)、7個の腰椎、3個の仙椎で構成されています。
頸椎の一部を除いて、それぞれの頸椎の間には頸椎版と呼ばれる軟骨が挟まっています。
そしてそれが、クッションの役割を果たしているのです。
また脊椎のなかには脊柱管という空洞があり、そのなかには脊髄と呼ばれる神経の束が通っています。
この脊髄は脳からの命令を全身に伝えたり、全身からの情報を脳に伝えたりする役割を担っています。
ヘルニアのメカニズムとは?
ヘルニアとは、臓器が正しい位置から外へ飛び出してしまう症状のことです。
椎間板ヘルニアでは、椎間板が変性することによって、脊柱管内に飛び出しやすくなり、脊柱管内にヘルニアを起こしてしまうメカニズムです。
激しい運動や無理な姿勢で背骨に負担がかかることが原因と考えられています。
椎間板がヘルニアを起こすことによって脊髄にダメージを与えるため、足や各種臓器が脳との間の連絡がうまく取れなくなり、麻痺などの症状が見られるようになります。
犬の椎間板ヘルニアの治療とは?
痛みだけの場合、軽度の麻痺の場合は、安静とステロイドを含む投薬治療が行われます。
重度の麻痺が見られる場合の多くは、手術が必要になります。
手術直後は麻痺が残ることも多く、リハビリを行い足の機能回復を図ります。
このほか、背骨を安定させるためのコルセット装着、鍼治療など病院によって治療法は異なります。
犬の椎間板ヘルニアの予防法とは?
予防法としては、背骨に負担をかけないことがポイントです。
- 段差の上り下りなど激しい運動は控える
- 体重管理を行う
- 背中を丸めるような狭い場所に長時間入れない
- 腰に負担がかかる抱き方は控える
まとめ
椎間板ヘルニアは突然発症することも多いため、戸惑う飼い主さんも多いでしょう。
強い痛みや麻痺が生じたりすることから愛犬への負担は大きく飼い主さんも心を痛めることでしょうが、早めに治療をすることにより回復が見込める病気でもあります。
日頃から背中に負担をかけないように心がけるようにするとともに、背中を痛がるそぶりやふらつきが見られたら早めに動物病院を受診するようにしましょう。
この記事の監修者
獣医師 宮尾 岳
西新宿ペットメディカルクリニック 院長
新宿区の西新宿ペットメディカルです。
動物が病気になったときに治療することだけが獣医療ではありません。
日々の予防を喚起するのも自分の務めです。
日常の些細な疑問やケアからでも病院へ相談、もしくは足を運んで頂ければ幸いです。