コラム
2025年8月20日
犬に多い膝蓋骨脱臼(パテラ)とは?

犬に多い膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)とはどんな病気でしょうか?
ここでは、愛犬家にとって気になる膝蓋骨脱臼についてご紹介いたします。
目次
膝蓋骨脱臼(パテラ)とはどんな病気?
膝蓋骨脱臼とは、犬に多く見られる病気のひとつです。
別名「パテラ」ともいわれています。
膝蓋骨とは膝のお皿のことです。
膝蓋骨は通常、靭帯と腱に連結した形で、膝の前面中央に位置しています。
膝蓋骨は、膝を曲げ伸ばしする際には、滑車のように上下します。
しかしながら、何らかの原因で軌道から外れて、膝蓋骨が溝の外に落ちてしまうことがあります。
これを脱臼といいます。
また、溝から外れるまではいかないものの軌道からズレて不安定になった状態を亜脱臼といいます。
脱臼すると、膝蓋骨に付帯する靭帯・腱に引っ張られるため、大腿骨や脛骨が捻じれてしまいます。
また大腿骨と脛骨を連結している靱帯(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靱帯、外側側靱帯)にも大きく負荷がかかってしまいます。
そのため、脱臼を繰り返していると、日常生活に支障が出るのはもちろん、痛みが増してきて、関節炎や前十字靭帯断裂などといった新たな病気を引き起こすリスクが高くなります。
膝蓋骨脱臼には、2種類あります。
- 内側に外れる「内方脱臼」
- 外側に外れる「外方脱臼」
です。
内方脱臼は小型犬に多く、外方脱臼は中型・大型犬に多く見られます。
膝蓋骨脱臼の原因とは?
近年、小型犬を飼う家庭が増え、小型犬がなりやすい「内方脱臼」になる犬が増えています。
なりやすい犬種もありますが、脱臼の原因はそれだけではありません。
それでは、脱臼の3つの原因について見ていきましょう。
①遺伝的要因
膝蓋骨脱臼になりやすい犬種があります。
先天的に膝関節の骨や周囲の筋肉・靭帯に異常があるため発症する場合があります。
内方脱臼、外方脱臼ともに、なりやすい犬種があるので見ていきましょう。
<内方脱臼>
チワワ、ポメラニアン、トイ・プードル、パピヨン、ヨークシャテリア
<外方脱臼>
ミニチュアダックス、大型犬
②外的要因
衝突や高い場所から落ちる、ジャンプなど、瞬間的に強い力が膝にかかることにより発症するケースがあります。
室内で飼育している犬の場合、滑りやすい床が原因となることもあります。
内的要因
成長ホルモンが正常に分泌されないことによるケースや、フードの成分に偏りがあることによる栄養障害が原因となる場合もあります。
膝蓋骨脱臼の症状とは?
ここからは、膝蓋骨脱臼の症状について見ていきましょう。
症状の軽い順にご紹介いたします。
愛犬に以下のような症状がないかどうかチェックして見てください。
- 後ろ足を片方だけ挙げてスキップするように歩くときがある
- 寝起きに後ろ足を伸ばす、上げるなどしている
- 散歩を嫌がるようになり、長い距離が歩けなくなる
- 歩いているときや、抱っこしようとすると、キャンと鳴く
- 膝からパキパキといった関節の音が聞こえる
- 足を引きずる、痛がる、歩けない
上記のような症状が見られたら、動物病院を受診するようにしましょう。
病院では、実際に歩いているとき、立ち止まっているときの状態を確認したり、触診、レントゲン検査などが行われます。
膝蓋骨脱臼のグレード
それでは、次に脱臼のグレードについて見ていきましょう。
グレートは4つあります。
グレード1
普段は症状が見られませんが、激しい運動をした後に、足を伸ばして膝蓋骨を押すと脱臼し、手を離すと元に戻ります。
グレード2
膝蓋骨が脱臼したり、元に戻ったりするが、日常生活に支障はありません。
指で押すと脱臼は元に戻せます。
このまま放っておくと靭帯も伸び、グレード3へと進行します。
グレード3
膝蓋骨は常に脱臼している状態です。
押せば元に戻りますが、指を離すとすぐに脱臼します。
膝関節を曲げたまま歩くため、足を引きずっているように見えます。
大腿骨や脛骨の変形も見られるようになります。
グレード4
大腿骨や脛骨の変形が著しく、膝蓋骨は常に脱臼していて、押しても戻らない状態です。
膝を伸ばすことができない状態です。
膝蓋骨脱臼の治療方法
膝蓋骨脱臼の治療方法は、大きく2つです。
内科的・保存的治療
グレード1・2と診断され、外科的治療を行わない場合に行なう治療法です。
- 体重管理を行なうことにより、関節への負担を軽減します。
- なるべく運動をさせず、関節への負担を軽減します。
- 抗炎症剤や鎮痛剤、サプリメントといった薬物療法で痛みを緩和し、進行を抑えます。
- 滑りやすい床の改善など、膝関節に負担がかからないような環境改善を行ないます。
体力的に厳しい、術後のケアに大変、合併症を引き起こすリスクがあるなどといった理由から、高齢犬や大型犬、肥満の犬の場合、手術を勧められず、内科的・保存的治療を行なうことも多々あります。
外科的治療
外科的治療については、さまざまな術式があり、症状やグレードによって、どの術式が採用されるかが決まります。
一般的に、2歳以下の若い犬でグレードが2以上であれば、重症化を防ぐために手術を行なう場合が多いとされています。
脱臼を放置していると、症状が悪化するだけでなく新たな病気を引き起こすリスクも高まります。
将来的に歩けなくなることもあるため、多くの動物病院では手術を勧められることが多いです。
まとめ
膝蓋骨脱臼は、犬多く見られる病気です。
気になる歩き方をしている、足を引きずっている、痛がっているなどの症状が見られる場合には、動物病院を受診しましょう。
また日頃から、滑りにくい床にする、あまりジャンプをさせないなど、足に負担がかかる動きをさせないような環境づくりに取り組むことも大切です。