コラム

2025年6月17日

腎臓病を早期発見。新しい血液検査項目SDMAとはどんな検査?

腎臓病を早期発見。新しい血液検査項目SDMAとはどんな検査?

動物病院で「SDMAも測ってみましょう。」と言われたことありませんか?

「SDMA」とは、比較的新しい血液検査の項目です。
ここでは、「SDMA」の検査で分かること、注意点など詳しくご紹介いたします。

SDMAとはどんな検査?

「SDMA」とは、新しい腎臓の評価方法として加わった血液検査の項目のひとつです。
2017年の冬頃から日本で外注検査として行なわれるようになりました。

SDMAとは、対象性ジメチルアルギニンの略で、アミノ酸の一種であるアルギニンが体内で変化したものです。

私たちが摂取したタンパク質は、体内でアミノ酸に分解されます。
その際、SDMAが血液中に放出されます。
血液中に放出されたSDMAのほぼ全てが腎臓でろ過されて、尿とともに、体外へ排泄されます。

ここで注目して欲しいのは、腎臓が血液のろ過を司る臓器であるという点です。
ろ過されて尿として排泄されるはずの物質が血液中に多く残っているということになれば、腎機能が低下しているということになります。

これと同じ原理で「クレアチニン」の計測があります。
これまで、クレアチニンの数値を測ることで腎機能が正常かどうかを測ってきました。
同じように、SDMAの数値を測ることにより、腎機能が正常に働いているかどうかが測れるようになったのです。

SDMAとクレアチニンの違いについて

SDMAとともに腎機能の機能を測ることができる指標にクレアチニンがあることは、前述の通りですが、SDMAとクレアチニン検査にはどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは、SDMAとクレアチニンの違いについてご紹介いたします。

クレアチニンは、腎機能が約75%喪失するまでは上昇しないとされています。
ということは、クレアチニンを測定することにより腎機能が低下していると診断されたときには、すでに腎臓の機能は25%しか働いていないということになります。
つまり、腎臓病がかなり進行しないとクレアチニンの数値には現れないということなのです。

しかしながら、SDMAは腎機能が40%喪失した時点で上昇がはじまるとされています。
そのため、クレアチニンとSDMA両方で計測を行なった実験では、猫においては平均17ヶ月早く腎臓病を発見できるようになったということです。

またクレアチニンは、筋肉で生成される物質であるため、老猫や痩せた猫の場合、腎機能が正常であってもクレアチニンの数値が下がってしまいます。
一方、SDMAは、筋肉量に影響されることはないので、腎機能を正しく測る指標としてはかなり有能であると言えます。

SDMA検査の際に注意すべき点について

SDMA検査の際に注意すべき点について

ここまで読み進めていただいた皆さまには、「SDMA検査は、クレアチニン検査に比べて、正確性が高いんだから、SDMAの検査だけすれば良いのでは?」と思った方も多いのではないでしょうか?
しかしながら、SDMA検査にも注意が必要な点があります。

ここでは注意が必要な2点についてご紹介いたします。

検査結果のブレが大きい点

腎臓病の疑いがある子のSDMAを計測してもあまり数値が上がらない、一方、疑いがない子の数値が上がるということが、多々みられるそうです。

このように検査結果にブレが大きいため、SDMAの数値だけを見て腎臓病と診断することは時期尚早であると言えます。
SDMAに関しては、持続して数値が高いかどうかによって診断することが求められます。

しかしながら、SDMAの検査に関しては、外注検査であるため、検査結果が出るまで時間がかかるため、一度の検査ですぐに診断には至らないという点では、注意が必要だと言えます。

既存の検査の精度を越えられるかという点

SDMAの基準範囲は、「1dL中に含まれるSDMAが、0~14μgであること」とされています。

これだけを見れば、15μgを超えた場合、即腎臓病の可能性かと思いきや、SDMA検査を行なっている会社のガイドラインにおいては、15~19μgであった場合、尿検査を実施し他の腎臓病のエビデンスを確認すべきとされています。

実は、SDMAが20μg以上であった場合、尿比重やクレアチニンに既に異常値が出ていることが多いのです。

では、SDMAが15~19μgの場合、エビデンスとして従来から行われてきた検査が用いられることになりますが、これらの検査で異常と認められなかった場合、SDMAの数値が15μgを超えていたとしても腎臓病という診断に至ることはありません。
2~4週間後に改めて再検査を行なうということが推奨されているのです。
そして、2~4週間後の再検査の際にも前述したようにブレがあるため、はっきりとは腎臓病と診断しにくいのです。

またこれまでの研究においては、クレアチニンの逆数に、腎臓のろ過機能は比例するということが分かっています。
そのため、SDMAの数値と併せて診断するよりもクレアチニンの数値さえ、注意深く計測しておけば正確な診断ができると考えている獣医師もいるということです。

まとめ

ここまで述べたように腎機能の新しい検査方法であるSDMAについては、早期発見につながるのでは?という期待がある一方で、まだまだ検査の正確さに不安が残るものであるとも言えます。

ただし、より正確な診断のためには、SDMAと併せて既存のクレアチニンなどの検査を組み合わせていくことで、より慎重かつ正確な判断につながるのでは?という期待感もあります。

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